17:00
ヘロヘロにくたびれてしまったのは、4時間で12キロ以上も散歩したからなのもあるけれども、最大の要因は何も収穫がなかったからだと思う。何も、というのは嘘だな。帰り道にファミマでガリガリ君と炭酸水を買って飲み食いしたから。
周囲が人で溢れているわけではないにせよ、今日の状況下で道端で飲食をするのはどうしても背徳感を覚えてしまう。人目を気にしながらマスクを外してアイスを頬張ることで得られる特殊なスリル感と、散歩を始めてから何も口にしていなかったことが相まって、美味しく召し上がってしまった。召し上がってしまったのである。
僕は昔から物事を損得勘定で考えがちで、たかが散歩なのに「収穫があったかどうか」を気にしてしまう。果たしてその散歩は自身を向上させる何かがあったのか。12キロも歩いて得られたものは何だったのか。230円のバス代を払わないことで幸せを掴むことができたのか。こんなのだから友だちをつくれないのである。
いまさらこの性格が変わることはないので、僕はおじいちゃんになっても楽天ポイントを稼ぐために5か0のつく日にしか楽天で買い物をしないだろうし、マイネオを利用して携帯代は月2000円以下に抑えているだろう。それでかなりニコニコしているだろう。幸せじゃんね。楽天マイネオニコニコじいさんだぞ。
本日は散歩の目的こそ達成することができなかったものの、とても楽しかった(特にコンビニでアイスを買った部分)ので大成功だったし、得だった。得な散歩であった。安養寺を目指して辿り着けなかったが、オトクな散歩をすることができた。
最悪「得」ではなくても「これは得でした」と言い切ってしまえば、もうそれは「得」になるので、僕も気持ちよく伸びをすることができる。
16:00
まことに残念な様子で安養寺を後にした。これじゃハキハキと6キロ歩いた意味がないなと、安養寺の近くにあった南禅寺というでっかい寺へ足を運んだ。僕は南禅寺がどのような趣旨で建立した寺なのかは存じ上げないのだけれど、でっかくて楽しかった。寺はでかければでかいほどいい。境内では着物を着た若い女性ふたりが、色褪せたボロボロのシャツを着たおじさんカメラマンに、自撮り棒で撮影しているポーズの写真を撮ってもらっていた。風情があったね。
すでに膝が笑っていたのだけれど、僕はふらふらと来た道を辿っていた。知らない間にバス停を過ぎてしまったことに気づくと、バス代230円を払って帰るのが馬鹿らしくなり、せっかくだし喫茶店でアイスコーヒーでも飲もうかという気分になっていた。少し汗ばむくらいの気温だったし、何も飲んでいなかったので喉も乾いていた。
最悪コンビニでもいいという予防線を張りつつも、おしゃれなカフェでコーヒーを飲みたかったので良さげな場所を探索しながら下宿先へ向かった。途中で何度も良さげな喫茶店を見つけたのだけれど、喫煙可能なお店だったり若者で溢れかえっていたりして、なかなかしっくりくる喫茶店に辿り着くことができなかった。そのまま帰り道も後半戦へ突入してしまい、これではもう喫茶店に立ち寄る気分じゃないなと、最悪のケースことコンビニへ行くことになった。
恋人ができてからひとりで飲食店に入る機会が激減したのだけれど、そのせいかひとりで入店することに強い抵抗を感じてしまうようになっていた。ダサすぎる。近々喫茶店へ突入するぞ。今日はただ疲れていただけなので入れなかっただけ。
あと「アイスコーヒーでも飲もうかという気分になっていた」と前述したが、実際には人工的な緑色をしたメロンフロートを飲みたかった。甘い汁を飲みたかった。
15:00
おいおい、まさか安養寺が閉店してるなんて知らないよ。そのなのないだろ。
2時間ほど歩いて目的地らしき場所へ来たものの、安養寺を指し示す看板はどこにもなかった。あちらこちら歩き回って、ようやく安養寺に辿り着いたと思ったら、完全に閉まっていた。コロナ禍だからか。寺院もコロナ禍の被害に遭っているのか。
安養寺へ来て聖地巡礼だやっほいとブログにアップする予定だったのが完全に狂ってしまった。一体何のための散歩だったのか。こちとら汗だくでここまで来たのに。開かない寺には入れないので諦めて帰ることにした。
僕は生粋のブロガーなので、安養寺を拝めないと分かってすぐにブログのネタにしてやろうと考えた。いやすぎる~~~
14:00
こんなに気持ちの良い天気なのに丸一日を読書で潰してしまうのは最高気温20度予想の京都市に見せる顔がない。ちょうど村上春樹の『猫を棄てる』を読み終わったところで、彼の父親の生家である安養寺が近所にあるという事実が判明したので、いわゆる聖地巡礼をいたしましょうということで、話がまとまった。
グーグルマップによれば下宿先から目的地まで徒歩で1時間半ほどかかるとのことだったので、行きは歩いて帰りはバスにのんびり揺られる計画を立てた。往復ともにバスを利用することも考えたけれど、交通費が勿体ないのと運動不足を解消するために歩きで。天気もいいし。
財布とスマホ、イヤホン、それにバスの中で読む用の本をグレゴリーのボディバッグに詰め込んで13時に下宿先を勢いよく飛び出した、のは良かったのだけれど……。