The Azure

動き

くるまがうるさい

さっきからサイレンを高らかに鳴らす消防車が、僕のアパートの前の通りを走っている。それも何台も。バスタブをひっくり返したような深紅の乗り物が数分おきに走ってゆく。金閣寺とか燃えたのかな。

京都へ越してきていちばん最初に衝撃を受けたのは、走る車のうるささだ。これに尽きる。周囲が民家に囲まれているベリベリカントリーサイドから、(大都会ほどではないけれども)「街」に来たのだからギャップが大きい。乗用車、バイク、バス、消防車、救急車など、さまざまな車がそれぞれの魅力的な音を奏でながら西通りを走り抜ける。うるさい。憂鬱は運ばれない。

とはいっても、緊急車両がうるさいのは仕方ないことだ。うるさくする必要があるのだから。悪質なのは、「うるさくしてやろう」と確固たる意志のもとで改造された車だ。あれは酷い。やめてくれ。本当に迷惑なので。と、このように僕が懇願したところで鉄の塊は依然としてうるさいままだし、中にいる悪の権化こと人間の操作によって僕がペチャンコにされてしまう恐れもあるので、部屋の隅で体操座りをするなどして過ごす。

僕は乗用車には移動の便益さえもたらしてくれれば十分だと考えている。したがって、今後の技術発展により、車の放つ音という音が排除されることを心から願っている。無音車両が街を走り抜ける輝かしい未来に光あれ。